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第20回ACジャパン広告学生賞|グランプリ
https://www.ad-c.or.jp/campaign/cm/winners/np/index.html
私たちは、日常生活の中で毎日無数の広告に触れています。
奇抜なデザインではないけれど二度見した広告がある、という方は案外いらっしゃるのではないでしょうか。
そういった広告はなにかしらのインパクトのある広告と言えます。
今回は、心理学的視点も交えながらインパクトのある広告について考えてみたいと思います。

インパクトのある広告とは
「インパクトのある広告」を定義づけることは難しいですが、独創的かつ印象深いビジュアルやメッセージが消費者の好奇心を刺激し、通常の期待を超える何かを提示したとき、その広告は「インパクトがある広告」と言われるのではないのでしょうか。
普段の見慣れたパターンとは異なった、新鮮で、予想外な要素を含んでいることが、重要なポイントだと考えられます。
広告における心理戦:認知バイアス
認知バイアスは、私たちが情報を処理する際に無意識のうちに犯す思考の偏りです。
これを広告に応用することで、消費者の注意を引き、行動を促す効果的な手段になります。
群衆心理(バンドワゴン効果)
群衆心理とは、多くの人々が何かを好んだり使ったりしているのを見て、他の人々もそれに従いたくなるという心理です。
例えば、あるスニーカーブランドが市場に投入した新商品の広告で、「全国の若者に愛されています!」と強調することで、更なる購買意欲を刺激します。
実際、消費者はこのようなメッセージを見ると、自分もその流行に乗り遅れないようにという動機づけを感じることが多いのです。
確証バイアス
確証バイアスは、既に持っている信念を支持する情報に対して特に注意を払う傾向のことです。
たとえば、環境保護を重視する消費者に対して、製品がエコフレンドリーであることを前面に出した広告を展開することで、その製品への信頼と関心を高めることができ、このバイアスを利用した広告は、消費者の既存の価値観を強化し、その結果として購買へ導きます。
こういった心理戦術を活用することで、広告はただ見るだけではなく、消費者に深い影響を与えることができるのです。
広告における心理戦術:感情と記憶の結びつき
感情は消費者の意思決定プロセスに大きな影響を与える要素です。
特に、広告が感情的な反応を引き出すことができれば、そのメッセージが長く記憶される可能性を高めることができます。
- 喜びの感情を誘発する
喜びや幸福感を感じさせる広告は、ポジティブな印象を与えることでブランドへの好意を形成します。
例えば、家族や友人との幸せな瞬間を描いたCMは、見る人に温かい感情を引き出し、そのブランドをポジティブなライフスタイルの一部として記憶にとどめることができるでしょう。
- 驚きを利用する
驚きや新奇性は、消費者の注意を即座に引きつける効果があるので、
予期しない展開や斬新なアプローチを含む広告は強い印象を残し、後でその広告について話すきっかけとなることが多く、
メッセージを記憶の中で際立たせ、長期間にわたって思い出されることになります。
- 安心感を与える
安心感を提供する広告は、特に不確かな時代に、消費者の信頼を獲得する重要な手段です。保険会社や健康製品の広告でよく見られるこの戦略は、製品が消費者の不安を解消する手助けをすることを強調し、その結果、製品への信頼と安心を築きます。
インパクトのある広告のポイント
インパクトのある広告を作成するためには、単に視覚的に目立つだけでなく、消費者の感情に訴えかけ、記憶に残る要素を組み込むことが重要と言われています。具体的なポイントを紹介します。
- 創造性とオリジナリティ
ユニークなアプローチを取ることが、人々の注意を引く第一歩です。既存の枠を超えたアイデアや斬新なデザインが、広告に新鮮さをもたらし、見る人に新たな視点を提供します。 - 感情的なエンゲージメント
広告がストーリーテリングや感動的な要素を含むとき、その広告は見る人の感情に訴え、強い共感を呼びます。人は自分の経験や願望と広告のストーリーを関連付けることで、より深くそのメッセージに引き込まれます。 - 意外性と驚き
見る人の期待を裏切るような意外な展開や、驚きの要素を用いることで、広告は忘れがたい印象を残すことができます。こういった要素は、広告の話題性を高め、口コミを促進する効果もあります。 - 明確で簡潔なメッセージ
インパクトのある広告メッセージは、明確で簡潔です。消費者に伝えたいことをシンプルにまとめ、誤解の余地をなくすことが重要で、そうすることで、メッセージの理解と記憶が容易になります。 - 視覚的なインパクト
強いビジュアルは広告の効果に大きく影響します。色の使い方、画像の構成、動画のクオリティなど、視覚的要素が印象的であることが、インパクトを最大化します。
インパクトのある広告の事例
インパクトのある広告の事例をいくつか紹介します。
・放送大学学園:「ここだけの話。俺は今、大学生だ。」
2024年4月3日に発表された、毎日新聞社が主催し経済産業省が後援する第91回「毎日広告デザイン賞」で、実際に新聞に掲載された広告を作品として審査する「広告主参加作品の部」の最高賞を獲得しました。
年配の男性が語りかけるメッセージにインパクトがあります。

https://www.advertimes.com/20240409/article455833/より引用
・カネボウ化粧品:KATEリップモンスター
カネボウ化粧品の「KATE(ケイト)」は、2024年1月1日(月)の読売新聞の朝刊に、リップモンスターの全ページ広告を掲載しました。
辰年をテーマにした「唇年」のグラフィックは、欲望を象徴する唇をイメージし、唇に一塗りするだけで自信と勇気を与え、新しい自分へと導くメッセージが込められており、シンプルながら遊び心のあるデザインが注目を集めました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000613.000016220.htmlより引用
・日産×積水ハウス:「未来にまかせる君」
日産自動車が「+e PROJECT」を通じて、集合住宅におけるEV充電設備の重要性を強調するため、SFコメディWEBドラマ「未来にまかせる君」を2024年1月22日から配信しています。
このプロジェクトは積水ハウスと共同で、EV充電設備の設置を促進し、住環境の改善を目指すもので、ドラマは、EV充電設備を設置しなかった未来の様子をコミカルに描き、視聴者に未来の住環境の変化を考えさせます。
さらに、「まかせる君」というキャラクターを通じて、行動の変化や社会ルールの進展についても提示しており、SFコメディWEBドラマという新しい形での発信は「ついつい見てしまう」と話題になりました。

https://ev2.nissan.co.jp/PLUSEPROJECT/2023/より引用
今回は、心理学的視点も交えながらインパクトのある広告について考えてみました。
独創的なビジュアルやメッセージ、予期せぬ展開は、消費者の好奇心を刺激し、広告のメッセージをより深く、長く心に留めさせる力を持っています。これからも媒体が多様化していく広告業界では、アイデア次第でさまざまなインパクトを出す方法があると思います。