サウナブームから学ぶ:体験したくなるPR

近年、サウナが若い世代を中心に注目を集めており、
好きが高じてサウナ店をオープンするという経営者も見られます。
また、若い世代が経営を引き継ぐ際に、サウナブームを受けて施設をリニューアルし、サウナスペースを拡張したり、ロウリュ(水を熱した石にかけて蒸気を発生させるフィンランド式サウナの一環)のような新しい体験を提供しているという例もあります。


今回はサウナブームを広告制作の視点から捉え、「体験したくなるPR」に焦点を当てて考えてみたいと思います。



サウナブームの背景

現在のブームは「第3次サウナブーム」と言われています。
火付け役となった、クリエイターのタナカカツキ氏による漫画「サ道」が、2009年のウェブマガジン連載開始をきっかけに、11年に書籍化、ドラマ化されたこともあって、サウナ文化がより広く普及することとなりました。


このブームで、サウナがリラクゼーションやデトックス、メンタルヘルスの向上に役立つという認識が広がったことにより、質へのこだわりが強まり、様々なタイプのサウナが登場し、サウナ愛好家たちは、より自分に合った「ととのう」サウナを求めるようになっています。


「第1次サウナブーム」は1964年の東京オリンピックで選手村にフィンランドのサウナが設置され、マスコミが取り上げて大きな話題を呼んだことがきっかけになりました。「第2次サウナブーム」では、1990年代の健康ブームと共にスーパー銭湯や健康ランドでのサウナ利用が増加しました。


「第3次サウナブーム」は、今までのブームとは異なり、若い世代を中心にサウナの新たな魅力が再発見され、サウナを楽しむ文化が多様化したことが特徴です。


健康とウェルネスに高まる関心

近年、健康とウェルネスへの意識が高まり、サウナが提供するストレス解消、免疫力向上、リラクゼーション効果といった健康面へのメリットが幅広い層に注目されています。

・メディアとの相乗効果
テレビ番組やSNSを通じてサウナの魅力が広がり、特に若い世代にサウナ文化が普及しました。メディアへの露出により、サウナは健康的なアクティビティとしての地位を確立したと言えます。

・コミュニティの形成
サウナ愛好家たちのコミュニティが、情報や体験の共有を通じてサウナへの興味を促進し、サウナ文化を根付かせる役割を果たしています。


これらのブームを通じて、サウナは日本で健康やライフスタイルの一部として認識され、独自の文化として成長し続けています


様々なPR手法

サウナブームを支える背後には、独創的で効果的なPR手法が存在しますが、
これらは、サウナ業界だけでなく、他の業界にも応用できると思います。

デザインの影響力

デザインは体験の本質を伝え、消費者の心を引きつける力を持っています。
サウナの場合は、清潔感、リラクゼーション、自然への近さなど、サウナが提供する価値をビジュアルで表現することにより、その魅力を伝えています。

PR動画の活用

動画は、映像で体験をよりリアルに伝える手段です。
ロケーションや施設を映し出せば、心地よい環境でのリラクゼーションが想像でき、視聴者の関心を引きつけて、行動を促すきっかけになるでしょう。

マルチチャネル戦略

PRには、複数のチャネルを通じた一貫したメッセージが効果的です。
オンライン(ウェブサイト、ソーシャルメディア、オンライン広告)とオフライン(イベント、印刷物、店舗内プロモーション)を組み合わせ、ターゲット層に合わせたカスタマイズされたアプローチを展開します。
こういったマルチチャネル戦略で、さまざまな顧客層にリーチし、魅力を幅広く伝えることができます。


体験したくなるPRの事例

実際に体験したくなるようなWebデザインやPR動画の事例をいくつか紹介します。

・星野リゾート:リゾナーレ小浜島「バレルサウナ」のPR動画
沖縄県の小浜島にある、星野リゾート「リゾナーレ小浜島」は、沖縄の美しい自然と組み合わせたバレルサウナの体験を紹介しています。
ホテルに隣接するビーチに佇むバレルサウナで、たんかんモチーフのグッズに身を包み、サウナを楽しむ様子が映し出され、視聴者にリラクゼーションの場としてのイメージを強く印象付けています。

参考記事:https://onesauna.jp/barrel-sauna/blogs/showcase/5_bstjnbc


・ソロサウナTUNE
「ソロサウナTUNE」は、完全個室でプライバシーが保たれた環境でサウナを楽しむことができる施設で、
リラクゼーションに特化した設計で、都市部で手軽に利用できるのが特徴です。洗練されたWebサイトで没入感を表現しています。
慶應義塾大学医学部特任助教によるイベント「ととのう」が数値で見える「サウォッチ」の無料体験サービスなど、健康効果を科学的に証明するアプローチもしています。

https://solosauna-tune.com/より引用


・トットリサウナカー
株式会社エムアンドエムドットコーがプロデュース・デザインを手掛けた、移動式で本格薪サウナを楽しむことのできるサウナカー「トットリサウナカー」は、鳥取の四季や自然を楽しむために開発され、販売とレンタルを行っています。
鳥取県産のひのきを使用して、持続可能な社会づくりに貢献していることや、消防車と同様の技術を用いた耐久性の高さを提供していることを訴求しており、メッセージを前面に出したスタイリッシュなWebサイトとなっています。

https://mmtv.jp/tottorisaunacar/より引用


・大阪サウナDESSE
大阪市の地下鉄心斎橋駅近くにある都市型サウナ施設で、2023年4月にオープンしました。
200坪超の広さに8つの異なるコンセプトのサウナを設けており、サウナ初心者から熱心な愛好家までを対象としており、
イラストや写真を多く使用したWebサイトからは、新しく楽しい雰囲気が感じられます。
施設内には、貸切可能なプライベートサウナやユニークな「サ飯」提供のラウンジもあり、グッズ販売も展開しています。

https://desse.osaka/より引用


・エスコンフィールド北海道:tower eleven onsen & sauna
「世界初のフィールドを一望できる球場内天然温泉とサウナ」と話題の、野球観戦しながら楽しめる温浴施設があります。
球場を一望できる位置にあり、「汗戦浴」というユニークな経験を提供しており、最前列の外気浴テラスでリラックスすることもできる、新しいタイプのエンターテインメント温浴施設です。
2023年SAUNACHELIN(サウナシュラン)の特別賞を受賞しました。

https://www.hkdballpark.com/activity/10/より引用


競合が多い業種のPRプラン策定のポイント

PR戦略を策定し実行するには、いくつかポイントがあるようです。

  • ターゲットオーディエンスの特定
    どの顧客層に焦点を当てるかを明確に定義します。
    ビジネスパーソン、健康志向の高い人々、若い世代など、ターゲットに応じたメッセージングとプロモーションが必要です。
  • セールスポイントを強調
    競合他社と差別化を図ることが大切です。
    施設のユニークな魅力や提供する独自の体験を明確に打ち出すことで、顧客の関心を引き、記憶に残せます。
  • マルチチャネル戦略の展開
    オンライン(ウェブサイト、ソーシャルメディア、ブログ)とオフライン(イベント、印刷物、ローカルメディア)の両方を活用して、幅広い層にアプローチします。
  • 成果の測定と改善
    PR活動の効果を定期的に評価するために、ウェブサイトのトラフィック、ソーシャルメディアのエンゲージメント、施設への来訪者数など、具体的な指標を用いて成果を測定し、目標達成に向けて戦略を継続的に調整・改善します。

今回はサウナブームを例に、体験したくなるPRについて考えてみました。
PR戦略は、ただ施設を宣伝するだけではなく、その施設を通じてどのような体験や価値を提供できるかを伝えることが大切であり、デザイン、動画、マルチチャネル戦略など、様々な手法を駆使することで、新たなファンを創出することができると思いました。