広報や広告の現場では、「どんなふうに伝えるか」が重要なテーマとして常に存在します。
情報を正しく発信しているつもりでも、受け取る側にとっては思わぬ意味に聞こえてしまったり、誤った印象を与えてしまったりすることも。
たとえば、
「丁寧に説明したつもりが、逆に冷たい印象を持たれてしまった」
「明るく見せようとした言葉が、軽々しく感じられてしまった」
といったことは、私たち制作会社でも実際に経験したことがある事例です。
こうしたすれ違いは、情報そのものの正確性とはまた別のところで起こるもの。
だからこそ広報においては、「正しさ」以上に「誤解されない」ことが重要だと考えています。
今回は、広報の質を高めるために意識しておきたい“伝え方の視点”について考えてみたいと思います。

「正しい」は必ずしも
「伝わる」ではない
情報が事実に基づいていたり、専門的に正しかったとしても、それだけで伝わるとは限りません。
たとえば、専門用語を多用した文章は、同じ業界の人には理解されても、それ以外の人にとっては「難しい」「とっつきにくい」と感じられてしまいがち。
また、内容が正しくても、表現の温度感や言い回しによっては「冷たい」「上から目線」といった印象を与えてしまうこともあります。
そのため、広報では「伝えたいこと」だけでなく、「どのように受け取られるか」をあらかじめ想像して言葉を選ぶことが欠かせません。

誤解されやすいポイントとは?
どんなに気をつけていても、ちょっとした表現の違いで誤解を招いてしまうことがあり、特に次のようなパターンは注意が必要です。
- 専門用語を前提なく使ってしまう
- 主語や対象があいまいで、誰のことかわかりにくい
- 軽い気持ちで入れた言い回しが、不快に受け取られることがある
- 背景や社会的なコンテキストを考慮せずに発信してしまう
たとえば、「私たちは○○を推進しています」と書いても、読者がその背景を知らなければ、強引な印象になってしまう可能性があります。
特にSNSなどリアルタイムで反応が広がる場では、意図しない受け取られ方が炎上や批判につながるケースも少なくありません。

誤解を減らすために
制作側ができる工夫
私たち制作会社では、広告や広報記事を作成する際に、以下のような点を意識しています。
- 別の意味に取られる表現はないか、複数人で読み合わせをする
- 専門用語や表現に注釈をつける、あるいは言い換える
- 読み手が迷わず理解できるように、文章構成を整理する
- 言葉の“温度感”に配慮し、柔らかく親しみやすい表現を選ぶ
- 誤解を防ぐために、補足の一文を意識的に加える
さらに可能であれば、制作チーム以外の第三者にチェックを依頼することも有効で、専門外の人が読んでどう感じるかは、貴重な判断材料になります。

「伝える」から「届く」への視点転換
情報を伝えること自体は目的ではなく、それが正しく、誤解なく「届く」ことがゴール。そのためには、発信者側の視点だけでなく、受け手の立場で考える視点が欠かせません。
たとえば「わかりやすさ」だけでなく「どう感じるか」「どんな印象が残るか」といった感覚的な部分にも配慮が求められます。
とくに企業の広報や公式な発信では、その一文が企業イメージを左右する可能性があるため、「誤解されないようにする」ことは信頼構築の第一歩になります。

まとめ:正しさだけでなく、
“伝わり方”を設計する
これからの広報では、ただ正確な情報を発信するだけでなく、「伝え方そのものが持つ印象」まで考慮することが求められます。
言葉は、同じ内容でも伝え方次第で印象が大きく変わるため、読み手が「信頼できる」「共感できる」と感じられる表現かどうかを見直すことが、炎上や誤解のリスクを減らし、より深い信頼関係を築くことにつながっていくと考えています。