新しい指標「顧客幸福度」:ウェルビーイングについて考える

こちらの記事を読みました。
【日経クロストレンド】ブランド新指標「顧客幸福度」ランキング発表


近年、「ウェルビーイング」が重要なキーワードとしてビジネスの分野で注目を集め、企業経営にも取り入れられています。
これは単に健康や幸福といった状態を指すだけではなく、企業のブランドイメージや顧客関係において中心的な役割を担っている概念です。


この流れを受けて、ファンベースカンパニーの研究機関であるファン総合研究所は、「幸福」に着目した新指標、「顧客幸福度」という新しい指標の研究リポートを2024年3月に発表しました。
これは、顧客がそのブランドとの関係を通じてどれだけ幸福を感じているかを測るものです。
日経クロストレンドとの共同調査で、11業界の82ブランドを対象に、この新しい指標に基づく分析が行われました。
その結果、​​​​​​「顧客幸福度」が高い層ほど、推奨意向も購入意向も高い傾向にあることがわかり、マーケティングの新たな展開が示唆されています。


今回は、広告やデザインにウェルビーイングがどのような役割を果たしているのかを学んでみようと思います。



ウェルビーイングとは何か?

ウェルビーイング(well-being)は、個人の全体的な幸福や満足度を表す概念で、身体的、精神的、社会的な健康が調和している状態を意味します。
個人が自分の生活に対してポジティブな評価を持っている状態を指しますが、複数の側面を含みます。

  • 身体的ウェルビーイング
    健康的な身体状態や運動、栄養、睡眠など、身体的健康に関する要素を指します。
  • 精神的ウェルビーイング
    感情のバランス、ストレスや不安の管理、自尊心や自己効力感など、心理的な健康状態を示します。
  • 社会的ウェルビーイング
    人間関係、コミュニティとのつながり、社会的支援の受け取りや提供の状態を指し、個人が所属する社会内での役割や人間関係の満足度に関連します。
  • 経済的ウェルビーイング
    経済的な安定や満足感、資源の管理といった要素も含まれることがあります。
  • 環境的ウェルビーイング
    安全で健康的な環境、自然とのつながりなど、個人の生活環境の質に関連します。

ウェルビーイングが近年さらに広く関心を集めるようになった理由として、2015年の国連サミットで、SDGs(持続可能な開発目標)の一つとして採択されたことが挙げられます。
17ある目標のうち、3つめの目標は「すべての人に健康と福祉を(GOOD HEALTH AND WELL-BEING)」で、ウェルビーイングという言葉が用いられています。


ウェルビーイングを取り入れる意義

ウェルビーイングを企業に取り入れることは、顧客との長期的な関係構築に不可欠で、多岐にわたる要素が影響します。
顧客の幸福を中心に据えることで、企業は顧客の信頼と愛着心を築くことが可能になります。

顧客体験の全方位的な改善

ウェルビーイングをビジネスに取り入れる際の第一歩は、顧客体験の改善です。製品の品質、購入後のサポート、そしてブランドのメッセージや価値観の共有が、この体験を形成します。

社内文化と従業員の幸福

ウェルビーイングは、顧客だけでなく、社内文化や従業員の幸福にも密接に関わっています。
職場での満足度が高い従業員は、より質の高いサービスを提供し、これが直接的に顧客満足度へとつながります。従業員の幸福は、結果として顧客ウェルビーイングに寄与します。

組織全体の取り組みとしてのウェルビーイング

ウェルビーイングは、組織全体の哲学や文化に根ざした概念です。内側からの変化と外向けの戦略が一致している必要があります。


ウェブサイトや広告でウェルビーイングを組み込むポイント

ウェブサイトや広告は、顧客にとって最初の接点となることもあります。
ウェルビーイングを組み込む際のポイントについては、下記のようなことが言われています。

  • ストーリーを通じて情報を伝える
    訪問者に共感を呼び起こすために、企業の製品やサービスがどのように顧客のウェルビーイングに貢献するか、ストーリーを通じて情報を伝えます。企業の価値観を伝え、訪問者との感情的なつながりを強化できます。
  • ポジティブなメッセージ
    幸福や健康、バランスの取れた生活を促進するメッセージで、ブランドの肯定的な価値観を示します。これはウェブサイトのテキストや広告のキャッチコピーに反映させることができます。
  • 顧客の声を活用
    実際の顧客の体験談や証言をウェブサイトや広告に取り入れ、製品やサービスがどのように彼らの生活を豊かにしているかを伝えます。これにより、他の顧客との共感を生み出し、信頼性を高めます。
  • ウェルビーイング関連のコンテンツの提供
    ブログ記事やガイド、インフォグラフィックなど、ウェルビーイングに焦点を当てたコンテンツを提供します。
    これにより、訪問者に有益な情報を提供し、同時に企業のウェルビーイングへの取り組みを示すことができます。
  • ビジュアルで感情を動かす
    明るく前向きなイメージを伝える写真やグラフィックを用いて、ウェブサイトと広告の視覚的な魅力を高めます。幸福感を誘うビジュアルは、メッセージの効果を強化します。
  • 社会的責任をアピール
    企業がどのように社会的責任を果たしているかを強調することで、ウェルビーイングへの取り組みを示します。
    ウェブサイトのCSR(企業の社会的責任)セクションや広告キャンペーンで、企業の姿勢をアピールすることができます。

ウェブサイトや広告を通じてウェルビーイングの価値を伝えることは、顧客との長期的な関係を築く上で重要です。


ウェルビーイングを取り入れた事例

ウェルビーイングを効果的に取り入れた企業の事例をいくつか紹介します。

・ロッテ:「ちょこっと幸せ研究所」
ロッテは、チョコレート事業60周年を記念して「チョコレートと日々のちょっとした心の幸せ」をテーマに様々な研究や情報発信を担う「ちょこっと幸せ研究所」を2024年2月に設立し、チョコレートの幸福度向上への寄与を探る調査を実施しました。
全国2000名を対象に、チョコレートの喫食が人々の幸福感に及ぼす影響を調査した結果、チョコレートは他者とのコミュニケーションや前向きな気持ちの向上に寄与する可能性があることが示されました。これらの調査結果を基に、チョコレートが日常の小さな幸せにどう貢献できるかをさらに研究し、新たな商品開発やサービス提供に繋げていく計画です。

https://www.lotte.co.jp/corporate/chocotto/より引用


・住友生命:企業広告「それはおなじ。」
住友生命は、2024年1月に新たな企業広告「それはおなじ。」篇を開始し、テレビCMで人生100年時代のウェルビーイングに寄与する企業姿勢を伝えています。
バナナマンの設楽統と日村勇紀が登場し、学生からの将来への質問に対し、大人の心境を語ります。
このCMは、生命保険の意味を新たに捉え、個々の生き方に寄り添う姿勢を「for your well-being」というメッセージで表現しています。
住友生命は、ウェルビーイングへの貢献を目指し、そのブランド認知を高めることを目的としています。

https://www.advertimes.com/20231017/article436665/より引用


・大京:「THE LIONS JOURNEY」プロジェクト
大京は、2050年の住まいを構想する「THE LIONS JOURNEY」プロジェクトとそのビジョンを特設サイトで公開しました。
このプロジェクトは、分譲マンションブランド「THE LIONS」のリブランドとともに始まり、未来の住まいのアイデアを探求する取り組みです。
ウェルビーイング研究の専門家や未来予測の専門家とのセッションを通じて、海に浮かぶ移動型レジデンスの構想が生まれました。
この構想は、DESIGNART TOKYO 2023で展示され、新しいマンションデザインのコンセプトとして生態系やエネルギー生成にも貢献する建築とされています。

https://www.advertimes.com/20231107/article438781/より引用


ウェルビーイングの概念を
企業の広告戦略に取り入れるステップ

ウェルビーイングの概念を企業のウェブサイトや広告戦略に取り入れるには、計画的なアプローチが必要です。

  • 目標設定
    ウェルビーイングを通じて顧客のロイヤリティを高めたいのか、ブランドイメージを向上させたいのか、具体的な目標を定めます。
  • ターゲットオーディエンスの理解
    ウェルビーイングに関心があるお客様はどんな人たちなのか、彼らのニーズや興味を把握します。これにより、より効果的なメッセージングが可能になります。
  • 戦略の策定
    ウェルビーイングを取り入れたウェブサイトや広告の戦略を策定します。どのようなコンテンツが必要か、どのようなデザインやメッセージが適切かを考えます。
  • 実装と試行
    策定した戦略に基づき、ウェブサイトや広告キャンペーンの実装を行います。初期の段階では、小規模でテストを行い、反応を測定することが大切です。
  • 結果の分析と改善
    実装後は、結果を分析し、目標に対してどの程度効果があったかを評価します。改善が必要な部分は調整し、続けて改善していきます。

今回は広告やデザインに「ウェルビーイング」がどのような役割を果たしているのかを学び、まとめてみました。
ウェブサイトや広告を通じてウェルビーイングを伝えることは、顧客とのより深いつながりを築き、ポジティブなブランド認識を形成する効果的な方法であると言えます。


多様性の社会の中で、人々の価値観が物質的なものから心の豊かさに移り変わってきていることを感じました。