広告におけるフォント選択の重要性

著名なフォント供給会社であるモリサワ写研が共同で進行中のプロジェクトにおいて、昭和から平成にかけて書籍・マンガ・広告などで使われた書体を復刻する、という記事を読みました。(記事はこちら

広告においてフォントは、ブランドの個性を伝え、メッセージのエモーショナルな要素を高める重要な役割を果たしていると思います。
今回は広告におけるフォントの重要性について、掘り下げて考えてみます。

株式会社 モリサワ(Morisawa Inc.)
フォント、組版ソフトウェア、オンデマンド印刷機の製造販売を行っている。
日本語PostScriptフォントを初めて開発したことで知られ、日本のフォント市場でトップシェアを誇る。

Wikipediaより一部改変

株式会社 写研(しゃけん)
写真植字機・専用組版システムの製造・開発、書体の制作およびその文字盤・専用フォント製品を販売する企業。
現代のデジタルフォント環境に貢献する著名な書体デザイナーを輩出したことでも知られる。特に新聞や出版業界向けのフォントで知られる。

Wikipediaより一部改変

フォントが反映する時代のトレンドと文化

各時代の文化的背景は、その時代のフォントスタイルに大きな影響を与えてきました。
昭和時代には、社会の伝統と安定を重んじる文化的背景が、重厚感のあるフォントスタイルの人気を後押ししました。
平成に移行するにつれて、社会は情報化とグローバリゼーションの波を受け、よりシンプルでモダンなフォントが好まれるようになりました。
この傾向は令和に入るとさらに加速し、デジタル技術の発展と共に、
多様性とアクセシビリティを重視したフォントが注目を集めています。


フォントとブランド戦略

フォントの選び方は、ブランドのイメージ作りや人々の反応に大きく影響します。

例えば、高級感とエレガンスを醸し出したいブランドは、
細部まで洗練されたセリフ体フォントを選ぶことが多いです。
※セリフ体フォント・・・文字の端に「セリフ(serif)」と呼ばれる装飾が付いている欧文書体



これに対して、若者をターゲットにした活動的なブランドは、明るく読みやすいサンセリフ体フォントを好んで選ぶ傾向にあります。
※サンセリフ体フォント・・・文字の端に「セリフ(serif)」が付いていない欧文書体


また、デジタルテクノロジーの発展によってフォントデザインの可能性が広がり、オンライン上での見やすさや読みやすさが以前よりも重要視されています。

特にソーシャルメディアやオンライン広告では、目を引くフォントの使用が不可欠で、短い時間でターゲットの注意を引き、メッセージを伝えることが求められます。


2015年にGoogleは、シンプルさ、使いやすさ、そしてアクセシビリティを視覚的に表現するために、カスタムデザインされたサンセリフ体フォント「Google Sans」を新ロゴに採用しました。
フォントの更新により、新ロゴは、進化し続ける技術とサービスを反映し、Googleをより現代的でアクセスしやすいブランドとして提示しました。

Netflixは、ブランドのユニークさを強調し、ライセンスコストを削減するために、カスタムフォント「Netflix Sans」を導入しました。
このフォントは、Netflixのロゴと調和しつつ、広告、ウェブ、モバイルアプリを通じて一貫したブランド体験を提供しています。
「Netflix Sans」は、コンテンツファーストのNetflixの哲学を強化し、ブランドの視覚的識別性を高める重要な役割を果たしています。


デザインに適したフォントを
選択するためのポイント

広告やウェブサイトなどのデザインに適したフォントを選択するためのポイントとして、下記のようなことが言われています。

  • プロジェクトの目的とメッセージを考慮する
    フォントはプロジェクトの目的やメッセージを反映するものを選択する。
  • 読みやすさを優先する
    テキスト量が多い場合は、明朝体などの読みやすいフォントを選択する。
  • フォントの数を制限する
    一つのデザインの中では、多くても2〜3種類のフォントに留めると、
    デザインが統一される。
  • フォントファミリーを活用する
    同じフォントファミリー内の異なるスタイルを使うと、一貫性が保たれる。

適切なフォントを選択することで、メッセージの明確性を高め、視覚的魅力を向上させることができると思います。


アクセシビリティの観点から見た
フォント選択の重要性

アクセシビリティとは、障害の有無にかかわらず、すべての人がウェブサイトやアプリケーション、その他のデジタルメディアの内容に等しくアクセスできることを言います。

デジタルコンテンツが日常生活に深く組み込まれる中で、情報のアクセシビリティはますます重要な課題となっており、フォントの選択はただのデザイン上の決定ではなく、情報へのアクセスを可能にするか妨げるかの重要な要素にもなります。

フォントがアクセシビリティに与える影響を考慮する際、以下の点が特に重要だと言われています。

  • 読みやすさ
    長文を読む場合や、スクリーンリーダーを使用するユーザーにとって、文字の識別が容易なフォントが推奨される。
  • フォントサイズの調整の可能性
    ユーザーが自分のニーズに合わせてフォントサイズを調整できるようにすることも、アクセシビリティを高める上で重要。
    視覚障害のあるユーザーや高齢者にとって、この機能は必須となる。
  • コントラスト
    フォントの色と背景色とのコントラストは、テキストの可読性を大きく左右する。
    高コントラストの組み合わせを選択することで、視覚障害のあるユーザーも情報を読み取りやすくなる。
  • 文字間隔(ケルニング)と行間
    適切な文字間隔と行間を保つことで、テキストはより読みやすくなる。


モリサワと写研のような企業が、昭和から平成にかけて使用された書体を復刻する取り組みは、広告制作に新たな可能性をもたらし、過去と現在のデザインを繋ぐ橋渡しをしてくれると思います。
過去に学びながらも、より良く発展させていく視点が大切だと感じました。