企業の封筒デザインを考える

近年、業務効率の向上やコストの削減、環境面への配慮により、企業におけるペーパーレス化が進められています。
郵便受けに入っているのは、通信販売を利用した企業からのDMや、チラシばかりという方も多いのではないでしょうか。
しかし逆に、たまにしか届かない郵便物はアピールのチャンスとも言えます。
今回は、郵便物の中でも、開封が必要な封筒のデザインについて深堀りし、まとめてみたいと思います。


デジタル時代における郵便物

今やデジタルコミュニケーションが主流となり、メールやメッセージングアプリがビジネスコミュニケーションの主要な手段となっていますが、手続き書類などのやりとりを郵便で行うケースはまだまだ多いのではないでしょうか。

封筒は単なる郵便物ではなく、「企業の顔」としての大切な役割を担っています。

封筒から伝わる独特の感触と視覚的な印象は、企業のブランディングと直接的なコミュニケーションの重要な要素として、その役割を果たします。


封筒デザインが与える影響

良い封筒デザインは、企業のこだわりとプロ意識を伝え、ブランドのイメージを高めてくれるでしょう。
例えば、手続き書類や提案書、契約書などを送って来た封筒が、中身を見る前に企業の第一印象を決めてしまうことがあります。


クリエイティブで洗練された封筒は、受け取った人に期待を持たせ、内容への興味を引き出します。
また、ユニークな封筒デザインは開封率を高め、他の郵便物との差別化が図れるでしょう。


つまり、封筒は単に情報を運ぶだけでなく、企業のメッセージを伝え、ブランドを印象づける役割を果たしていると思います。


なぜデジタル時代に封筒が重要か

封筒での送付は、デジタルにはない意味を持っています。

  • 感情を動かす
    手紙には、デジタルメッセージにはない感情的な価値があり、
    封筒を開ける瞬間、人は特別な感情を覚えるのです。
  • 信頼性を提供
    封筒はプライバシーを保護し、情報を安全に送る手段ですが、
    これはビジネスで特に重要な要素と言えます。
  • 印象を残す
    封筒のデザインはブランドの顔とも言えるので、
    印象的なデザインは、受け取る人の記憶に長く残ります
  • 目に見える効果
    郵送されてくる手紙は、電子メールより視覚的に存在感があり、
    毎日受信する電子メールとは違って、多数のメッセージの中に埋もれてしまったり、重要なメッセージが迷惑メールフィルターによってブロックされる心配もありません。

封筒は今も、メッセージを強化し、受け取る人とのつながりを深める有効なツールと言えます。


クリエイティブな封筒デザインのアイデア

受け取る人に良い印象を残す封筒デザインのポイントとして、下記のようなものが挙げられます。

色の選択

ブランドのカラーパレットを封筒デザインにも取り入れることで、ブランディングの一貫性を強調できます。
鮮やかなあるいは落ち着いた色使いは、受け取る側の感情に直接訴えかけることが可能です。

ロゴとキャッチコピー目立たせる

封筒にロゴを大きく入れると、受け取った人に、すぐに会社を思い出してもらえる効果が期待できます。

開封が楽しいデザイン

封筒を開ける過程が楽しいと、印象に残りやすくなります。
例えば、特別なシールを使ったり、開けると何かが現れる引出し式にするといった工夫は、受け取る人の好奇心を刺激するでしょう。

エコフレンドリーな素材の選択

環境に優しい素材を使うことで、環境への配慮を示すとともに、エコ意識の高いブランドイメージを構築するのに役立ちます。


さまざまなアイデアを取り入れることで、封筒はただの郵便物ではなく、会社の個性を伝えるツールになるでしょう。


心理学的視点からのアプローチ

色彩や形状、テクスチャーが、人々の心理に及ぼす影響を理解すれば、封筒はより効果的なコミュニケーションツールとして活用できます。

  • 色彩心理学
    色は感情や行動に大きな影響を与えます。
    たとえば、青は信頼と安心感を、赤はエネルギーと緊急感を、緑は平和と成長を連想させるなど、色は感情や行動に大きな影響を与えますから、
    封筒デザインに適切な色を使用すれば、意図したメッセージを表現することが可能になります。
  • 形状の影響
    封筒の形状でも、受け取る人の感覚に訴えかけることができます。
    例えば、丸みを帯びた形状は柔らかさや親しみやすさを、角ばった形状はプロフェッショナリズムと強さを表現することができるでしょう。
  • テクスチャーの活用
    封筒の質感は、触覚を通して受け取る人の感情に直接訴え掛けます。
    高品質の紙や特殊な加工を施した封筒は、企業が細部にまでこだわりを持っていることを伝えることができます。

心理学的視点からのアプローチを封筒デザインに取り入れることで、受け取る人にポジティブな印象を与え、記憶に残るコミュニケーションを実現できます。


効果的な事例

効果的なデザインや取組の事例をいくつか紹介します

富山県高岡市:「ヤレ紙」を使用した名刺・封筒の活用
富山県高岡市は、広告印刷プロセスで生じる試し刷り用の損紙「ヤレ紙」を活用し、名刺や封筒を製造する取り組みを、2023年10月から開始しました。
このプロジェクトは、印刷物の権利問題をクリアし、資源の再利用という新たな価値を創出することを目指しています。
市が発行した印刷物の「ヤレ紙」を原料に、デザイン性を加えて再生紙製品を作成し、環境意識の向上とリサイクルの新しい形を提案しています。
この取り組みは、環境イベントなどでも配布され、今後も継続していく予定です。

https://www.advertimes.com/20231019/article436903/ より引用


・和田興産「ワコーレ」
和田興産は、神戸での不動産販売事業においてCIとツールを刷新し、マンションブランド「ワコーレ」を前面に打ち出しました。
特徴的な線を用いた名刺や封筒を制作し、シンプルで誰にもわかりやすいデザイン、二次元でありながら三次元を感じさせる工夫がされ、
名刺など他のツールとの統一感もあって、企業の印象を強めることができています。

https://mag.sendenkaigi.com/brain/201412/editors-check/003960.phpより引用


・株式会社ペーパル:紙の新素材「kome-kami」
株式会社ペーパルは、企業や自治体が廃棄する災害用備蓄米など、食べられなくなった「お米」を活用した紙の新素材「kome-kami」を発売しました。
フードバンクに売上の1%を寄付する取り組みも行っており、 食品ロス問題の解決を目標とし、SDGsが提唱する「持続可能な開発目標」の達成に寄与しています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000078028.htmlより引用


今回は、郵便物としての封筒のデザインについて深堀りし、まとめてみました。
手軽に使えるデジタルメッセージングツールは便利な一方で、メッセージの深みが損なわれている側面もあります。
デジタル時代であっても、封筒はメッセージを伝えるためのコミュニケーションツールと言えると思います。