写真の効果的な活用方法:ビジュアル要素の選択

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カンヌ映画祭 黒澤明監督の映画の一場面 公式ポスターに採用 | NHK


カンヌ映画祭が、2024年5月の映画祭の公式ポスターに日本の映画監督黒澤明の作品「八月の狂詩曲」の一場面を採用したと発表しました。
この映画は1991年にカンヌで出品されたもので、長崎の原爆を背景に、被爆した祖母が孫やアメリカ人の親族に対し、愛と誠実さが戦争の防波堤になるという信念を伝える内容です。
フランスのメディアは、このポスターが中東やウクライナの情勢を念頭に置いた国際的な団結を呼びかけるメッセージを含んでいると報じています。
広告における写真は、視覚的な言語を通じて強い感情やメッセージを示します。


今回は、広告やデザインの観点から、効果的な写真の活用方法について再考し、まとめてみたいと思います。



写真選びのポイント

広告写真を選ぶ際には、商品やサービスの魅力を正確かつ効果的に伝える必要があります。一般的なポイントをいくつか紹介します。

1.ターゲットオーディエンスの理解

写真を選ぶ前に、誰がその広告を見るのかを明確にします。
ターゲットオーディエンスの年齢、性別、興味、ライフスタイルなどの特徴を考慮し、それに合った視覚的メッセージを選びます。

2.感情的訴求

写真は感情を動かす力を持っています。
ターゲットオーディエンスが共感や憧れ、安心感など、特定の感情を感じるような写真を選ぶことが重要です。
これにより、広告の記憶に残りやすくなります。

3.クオリティとプロフェッショナリズム

高品質の写真は商品やサービスの質を反映します。
専門的なカメラマンによる撮影を利用することで、専門性と信頼性をアピールできます。

4.明確なメッセージ

広告の目的を強化する写真を選びます。
写真は、見る人に対して何を行動に移すべきかの明確なメッセージを伝える能力があります。
例えば、製品を使用している人物の写真は、その製品の使い方や利点を直接示すことができます。


写真と他のビジュアル要素との比較

広告において、適切なビジュアル要素を選択することは、メッセージの伝達や視聴者の感情に大きく影響します。
それぞれ異なる効果と使用場面があるため、ビジュアル要素の違いと、どのような場合にどれを使用するべきかを検討してみました。

  • 写真:リアリズムと信憑性
    写真はリアルな表現が可能であり、製品やサービスの実際の外観や使用感を正確に伝えるのに最適です。
    リアリティが求められる場面や、具体的な製品の特徴を強調したい時に効果的です。
  • イラストの使用:抽象的なコンセプトの表現
    イラストは抽象的なアイディアや感情、価値を表現するのに優れています。
    色彩や形で自由度が高く、創造的でユニークなメッセージを伝えることができます。
    子供向けの商品や親しみやすさを表現したい広告によく使われます。
  • アニメーションの使用:動きで関心を引く
    アニメーションは動きが加わることで、視聴者の注意を引きやすく、情報の伝達を助けます。
    複雑なプロセスや使用方法を説明する際や、ストーリーを面白く展開したい場合に特に有効です。
  • 写真とイラスト/アニメーションの組み合わせ:複合的なアプローチ
    場合によっては、写真とイラストやアニメーションを組み合わせることで、リアリティとクリエイティビティのバランスを取ることができます。
    例えば、リアルな商品写真にイラストを加えることで、製品の特徴を強調しながらも、視覚的に楽しい要素をプラスすることが可能です。

それぞれのビジュアル要素が持つ特性を理解し、目的に応じて最適なものを選択することで、より効果的な広告になります。


効果的な写真使用の事例

写真を効果的に使用している広告の例をいくつか紹介します。

・リクルート:結婚情報誌『ゼクシィ』
リクルートが運営する結婚情報誌『ゼクシィ』は、創刊30周年を記念して、2023年12月1日にさまざまなカップルの写真を採用した広告を渋谷に掲示しました。この広告は「あなたが幸せなら、それでいい」というメッセージを添え、実際の同性カップルや事実婚カップルなど多様なカップルの写真を使用しました。広告はOOH(屋外広告)のみで展開され、広告は視聴者の目線と同じ高さに設置され、渋谷という多様性のある街の特性と組み合わさることで、そのメッセージ性が強まったとされています。SNS上では多くの反響があり、さまざまな意見が交わされました

https://www.advertimes.com/20240419/article457185/より引用


・​​​​大塚製薬:ポカリスエット『青が舞う』篇
活動的なライフスタイルを描いた写真や動画が印象的な大塚製薬の「ポカリスエット」の広告。若者の日常をみずみずしく、弾けるような躍動感で描いており、多くの視聴者に感動を与え、広告業界からも高い評価を受けています。
「ポカリスエット『青が舞う』篇」のテレビCMは、第53回フジサンケイグループ広告大賞でメディアミックス部門グランプリを受賞しました。

https://www.otsuka.co.jp/adv/poc/graphic202304_01.htmlより引用


・近畿大学:「上品な大学、ランク外。」
近畿大学は、新年の新聞広告にAIによって生成された架空の学生の顔をビジュアルに使用しました。この広告では、200枚の近大生の写真から生成された架空の学生像を掲載しています。「上品な大学、ランク外。」というランク外となったことを逆手にとったコピーと組み合わされ、これにより、近畿大学のダイナミックで革新的なイメージを強化し、読者に「近大ってやっぱり面白くて、すごい」と感じさせることを目的としています。第53回フジサンケイグループ広告大賞でメディア部門新聞優秀賞を受賞しました。

https://mag.sendenkaigi.com/brain/202303/up-to-works/025907.phpより引用


・セコム:ラグビーチーム「セコムラガッツ」
2023年のラグビーワールドカップに向けた日経新聞の広告です。セコムの企業風土とラグビー日本代表の姿を重ね合わせ、スポーツ支援広告を展開しました。この広告キャンペーンは、セコムが内部に持つラグビーチーム「セコムラガッツ」の存在や、日本代表への支援を背景にしています。視覚的に活動的な瞬間を切り取ることで、静止画ながらにして活力や動きを感じさせています。また、ラグビーファンに多いビジネスパーソンへのアプローチに有効な媒体として日経新聞を選び、広告掲載によって企業イメージを向上させることができたと評価されています。

https://marketing.nikkei.com/case/newspaper/detail/001658.htmlより引用


今回は、広告やデザインにおける効果的な写真の活用法について再考し、まとめてみました。
AI技術の発展により、写真を簡単に生成できるようにもなりました。しかし、広告での差別化を図るためには、写真をコピー、イラスト、アニメーション、グラフィック効果など、異なるビジュアル要素と組み合わせることにより、広告表現の可能性は無限に広がると考えます。