整っているのに伝わらない?AI時代に必要な“観察力”とは

「AIでデザインを作ってみたけれど、なんとなく伝わらない気がする」
そんなふうに感じたことはありませんか?

AIは膨大な情報を整理して、最適なレイアウトや配色を導き出すのが得意です。
けれども、そこに“人の温度”を感じられないこともあります。

その違いを生むのは、“観察力”だと思います。
AIが「データを分析する力」だとすれば、人には「空気を感じ取る力」があります。

今回は、その“観察力”がデザインの印象をどう変えるのかについて、お話ししたいと思います。


AIの分析と、人の観察はちがう

AIは過去のデータをもとに「よく選ばれる色」や「見やすい構図」を提案してくれます。
それによって、整ったデザインをすばやく作ることができます。

でも、人が感じ取るのは“今この瞬間の空気”です。
たとえば、打ち合わせでクライアントが「もう少しやわらかい印象がいいですね」と言ったとき、その“やわらかさ”が指しているのは、単に丸みのある形ではないかもしれません。
「親しみ」や「安心感」といった、言葉にしにくい感情を含んでいることがあります。

AIは言葉をそのまま受け取りますが、人はその一言の「背景」まで読み取ります。ここに、AIと人の大きな違いがあると感じます。


“観察力”が見つける、言葉にならない情報

観察力とは、単に「よく見る」ことではありません。
相手の表情、声のトーン、話すときの間(ま)など、言葉の外にある情報を感じ取ることです。

デザインの仕事でも、クライアントが「明るくしたい」と言ったとき、
その“明るさ”が「元気」なのか「上品さ」なのかを見極める必要があります。

私たちは、相手がどんな場面を思い浮かべて話しているのかを想像しながら、
「きっとこういう雰囲気を求めているのではないか」と考えます。
そうした“観察の積み重ね”が、温度のあるデザインを生み出します。


観察力があると、デザインが“伝わる”ものに変わる

観察力を意識してみると、デザインの正解は一つではないことに気づきます。
同じレイアウトでも、「誠実に見せたい」ときと「親しみを感じさせたい」ときでは、選ぶ写真のトーンや余白の広さが変わります。

AIは正解を一つにまとめることが得意ですが、人は“感じ取った違い”をもとに、よりぴったりな形を探すことができます。

だからこそ、AIの提案をそのまま使うよりも、観察によって微調整することで、より伝わるデザインに近づけることができます。


制作会社の役割

制作会社の役割は、AIが作った案を修正することではなく、クライアントの想いを観察して、その意図を形にすることだと思います。

「この言葉の“やわらかい”って、どんなやわらかさだろう?」
そんなふうに、ひとつひとつの言葉の裏側を丁寧に読み取ることが、“伝わるデザイン”をつくる第一歩です。

AIが得意なのは「整えること」。人が担うのは、「感じ取って形にすること」。
この2つが組み合わさることで、より深く心に届くデザインが生まれるのではないでしょうか。


まとめ

AIの進化によって、デザインの効率は大きく上がりました。
しかし、相手の気持ちを察して表現に落とし込む力は、人にしかありません。

観察力をもって相手を理解しようとする姿勢が、“整っているだけ”のデザインを“伝わるデザイン”に変える鍵になると思います。