「この企画、似たような他社事例ってありますか?」
クライアントへの提案時、安心材料として「前例」を求められるケースは多いものです。 これまでは検索エンジンを使って、一つひとつ手作業で調べていましたが、今はAIのディープリサーチを使えば、数分でリサーチできるようになりました。
先日も、ある企画提案のためにAIにリサーチを依頼しましたが、 返ってきたのは、事例のタイトルから概要、参照元URLまで揃った完璧なリスト。
「さすが、これだけあれば十分だ」
一見そう思える結果でしたが、もしこれをそのまま提出していたら、私たちはクライアントからの信用を大きく損なうところでした。
今回は、AIリサーチの落とし穴と、そこから見えた「人の手」の重要性についてお話しします。

リンクを開いた先にあったのは「別物」
AIがリストアップした情報は、パッと見では非常に精度の高いもの。 しかし、念のためソース(情報源)を確認しようとURLをクリックしたところ、違和感の正体が明らかになります。
- ページが存在しない(404エラー)
- リンク先は正しいが、内容が全く関係ない
AIが「A社の事例」として紹介していた内容は、実際にはその記事のほんの一部を拡大解釈したものだったり、単なる一般論を事例のように見せていたりするものでした。 つまり、「それっぽい周辺情報」でボリュームを水増ししていたのです。
「事例がない」という事実をごまかすAI
なぜ、このような結果になったのか。 おそらく、実際に「該当する事例がほとんどなかった」のだと思います。
しかし、AIは「ありません」と答えることを避ける傾向があります。 ユーザーの期待に応えようとするあまり、わずかな関連情報をつなぎ合わせ、もっともらしい「回答」を作り上げてしまったのです。
もし私たちが、この検証プロセスを飛ばして「他社事例です」と提出していたらどうなっていたか。 「これ、全然違う内容じゃないですか?」と指摘され、企画の内容以前に、制作会社としての情報の取り扱いを疑われていたはずです。

「見つからない」ことこそが価値になる
この経験から、私たちはAIリサーチの結果を「疑う」ことから始めるようになりました。 そして、AIが無理やりつじつまを合わせてきた時は、こう捉え直しています。
「AIが嘘をつくほど、この企画には前例がない」
AIが正確な事例を出せないということは、競合他社もまだ手をつけていない領域である可能性が高い。 そう考えれば、AIの不正確なリサーチ結果も、「この企画はユニークである」という裏付けに変わります。
AIは優秀なツールですが、文脈や真偽の判断まではできません。 出てきた情報を鵜呑みにせず、必ず一次情報に当たる。 そして、「なぜAIはこの答えを出したのか?」を読み解く。
テクノロジーが進化しても、最後の「品質管理」は人の手(目)で行う。 当たり前のことですが、それがプロとしての責任であり、信頼を守る唯一の方法だと改めて感じた出来事でした。