2月14日のバレンタインデーといえば、毎年チョコレート商戦が加熱する一大イベントですが、近年はカカオ豆の先物価格が大きく上昇し、チョコレートの値段が軒並み高くなっているそうです。
とある調査によると、2019年12月と比べてカカオ豆の価格が約3.5倍にまで高騰しているという報道もあり、チョコレート業界では原料コストの増大が深刻な問題となっています。
一方で、チョコレートと同じくらい注目を集めているのが、ビスケットやナッツ、フィナンシェ、カヌレといった焼き菓子など“お菓子系ショコラ”だそうで、バレンタインの“本命チョコ”だけでなく、友だち同士で交換する“友チョコ”や自分への“ご褒美チョコ”など、多様なニーズが高まる中で、消費者の選択肢もますます広がっています。
今回は、こうしたバレンタイン商戦の現状を踏まえながら、企業がバレンタインデーに行うべきマーケティング施策について考えてみます。

バレンタインデーの背景
バレンタインデーの由来はキリスト教の聖人ヴァレンティヌスまでさかのぼりますが、日本では「女性から男性へチョコレートを贈る日」として定着しており、欧米では男性から女性へ、あるいは夫婦や友人同士で花束やジュエリーなどを贈り合うなど、国や地域によってスタイルはさまざまなのだそうです。
日本のバレンタイン文化は、お菓子メーカーによるキャンペーンがきっかけで広まったとも言われます。
その後、義理チョコや友チョコ、逆チョコ、自分チョコなど、多様なパターンが生まれており、今では「チョコレートを贈る日」という枠を超え、自分へのご褒美や仲間同士のイベントとしても定着しています。
カカオ高騰がもたらす影響
価格上昇で見えてくる課題とチャンス
カカオ豆の高騰によって、チョコレートの小売価格も1割ほど上昇しているそうで、消費者が「チョコレートが高くなった」という印象を持ちやすくなり、購買行動にブレーキがかかる可能性もあります。
しかし一方で、「カカオは希少な素材」というストーリーを活かし、プレミアム感を高めるチャンスでもあると言われており、「手に入りにくいからこそ価値がある」「高い品質のカカオを丁寧に使った逸品」として差別化し、特別感を強調することが重要だと言われています。
バレンタインはチョコレートの祭典から
スイーツ全体へ
カカオ高騰を受け、百貨店や専門店ではビスケット、サブレ、マドレーヌなど、カカオ含有量が比較的少ない焼き菓子のラインナップを増やす動きが強まっていて、百貨店でも焼き菓子系の商品数が昨年の2倍近くに拡大し、一部の商品は夕方には完売するほど人気を集めているそうです。
元々、バレンタインデーはチョコを中心としたイメージがありましたが、最近では「スイーツを楽しむ日」として変化しつつあり、チョコレートが苦手な方や価格面を気にする方でも、焼き菓子や多様なスイーツ商品でバレンタイン気分を味わえるようになっていると言われています。
バレンタインマーケティングで
顧客の心をつかむ方法
企業がバレンタインデーに向けて行うと効果的とされるマーケティング施策については、下記のことが有効だと言われています。
顧客一人ひとりに合わせた提案
消費者は「自分の好みに合った提案」を好むため、
- 過去の購入履歴やアンケートをもとに「あなたにおすすめのスイーツ特集」をメール配信
- 購入頻度の高いユーザーに、サイト上のポップアップで限定クーポンを提示
などのマーケティング施策が有効で、バレンタインデーならではの特典感を添えると、より購買意欲が高まると考えます。
カウントダウンメールやSNSでの告知
バレンタインまでの残り日数を可視化することで、“買い逃し”を防ぎます。
- メールにカウントダウンタイマーを設置し、「あと◯日!」と知らせる
- InstagramやTwitterで専用ハッシュタグ(例:#バレンタイン2025)を活用して告知
「気づいたら当日だった!」を避けるだけでなく、時間制限があることで購買意欲を後押しします。
商品トレンドの発信とレビュー活用
「どんな商品が人気なのか?」はバレンタイン前の多くの消費者が気にするポイントです。
- サイトやブログで「人気ランキング」や「レビュー高評価商品」を特集
- 試食イベントやSNSでの口コミをリアルタイムに発信し、購入意欲をそそる
「みんなが買っている」「評価が高い」という情報は、バレンタインのような季節イベントでは特に効果的だと言われています。
カート放棄(カゴ落ち)対策
ショッピングカートに商品を入れても、最後の購入ステップで離脱してしまうケースは珍しくありません。
- カート放棄したユーザーにリマインドメールを送る
- 購入未完了時に「あと○円で送料無料」といったメッセージを表示
ちょっとした後押しがあるだけで、バレンタイン限定の特別感も相まって購入を再開する場合があります。
アップセル・クロスセル
バレンタインシーズンは、普段より少し高価なものや関連商品を買おうという心理が働きやすい時期です。
- 定番チョコレートを検討しているユーザーに「限定パッケージのプレミアム版」を提案(アップセル)
- 焼き菓子を購入する方に「同じブランドの紅茶やコーヒー」も合わせて勧める(クロスセル)
バレンタインならではの「特別な日」を意識させることで、高単価商品やセット購入のハードルが下がると言われています。
ファンマーケティングとUGC活用
バレンタインに購入してくれた顧客と長期的に関係を築き、ファン化につなげることも大切です。
- 専用ハッシュタグを設定し、ユーザーのSNS投稿(UGC)を促進
- 投稿してくれたユーザーを公式SNSやブログで紹介し、コミュニティを盛り上げる
価格上昇やカカオ高騰の話題がある今こそ、商品の「こだわり」や「希少性」をストーリーとして発信することで、ブランド好感度やリピート購入の可能性が高まります。
バレンタイン後を見据える
バレンタイン当日が終わってからも、顧客との接点を大切にすることが重要です。
- バレンタイン後のフォローメールで、ホワイトデーや春のギフト情報を先取り提供
- 購入者限定クーポンを発行し、ECサイトへ再訪してもらう仕掛けを作る
- SNSやブログでバレンタインのエピソードを共有し続け、コミュニティを維持
こうした継続的なアプローチによって、単発の「イベント売り」ではなく、年間を通じて愛されるブランドや商品を育てることができます。

今年のバレンタインは、カカオ高騰という大きなインパクトを受けつつも、「スイーツ全体を楽しむ」動きが広がっていると考えます。
バレンタインデーは「女性から男性にチョコを贈る」という固定観念を超えて、友チョコや自分チョコ、さらには家族や同僚とのシェアなど、幅広いニーズに応えられるイベントへと進化しており、企業やブランドにとっては、価格上昇というピンチを逆にチャンスへと変える機会だと思います。
参考記事
・https://www.akebono-print.co.jp/2022/02/14/valentinesdaywhiteday-marketingstrategy/
・https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250208-OYT1T50235/