私たちは日々、デザインやコンテンツの企画提案を行う中で、さまざまなプレゼンの場に立ち会っています。
クライアントの課題をどう解決するか、なぜこの提案が最適なのか——その理由を伝えるプレゼンは、制作会社の仕事の大切な一部。
プレゼンというと、
「いかに説得するか」
「どうやって相手を動かすか」
という視点に偏りがちです。
ですが、実際に人が動くとき、それは“論破されたから”ではなく、“納得したから”というケースが多いのではないでしょうか。
今回は、制作会社として企画や提案を重ねてきた経験から、伝わるプレゼンに共通する要素を“共感”や“納得”という視点で掘り下げてみたいと思います。

説得と納得はまったく別のプロセス
「説得」は、言葉やロジックを駆使して相手をこちらの意図に従わせること。
一方の「納得」は、相手が自ら「なるほど」と感じて受け入れることです。
プレゼンの場では、相手の意思決定を促すことが目的ですが、そのために「納得感」を得てもらうことが不可欠です。
強い言葉や押しの強い話し方だけでは、人は本当には動きません。
「自分ごととして捉えられるか」「腑に落ちるか」が大切だと考えています。

「納得」を引き出す3つの視点
1. 相手の立場で“背景”を語る
いきなり結論を示すのではなく、なぜこの提案に至ったのかという“背景”を丁寧に伝えることで、聞き手が話の流れに乗りやすくなります。
たとえば
- 現在の課題は何か
- なぜその課題が起きているのか
- どうしてこの案がその解決策になるのか
という順に伝えることで、「なるほど、そういう流れか」と思ってもらえる土台ができます。

2. 数字や事例より“相手の感覚”に届く言葉を
論理的な情報(数値、比較、実績など)ももちろん大事ですが、それだけでは届かないケースも。
- 「こういう場面で、○○と感じたことはありませんか?」
- 「たとえば、こんなときに困った経験はないでしょうか?」
といった問いかけを入れることで、相手の経験や感情とプレゼンの内容をつなぐことができます。

3. 相手に“選んでもらう”姿勢を忘れない
「この案がベストです!」と強く言い切るよりも、「いくつかの選択肢がある中で、これが今の状況に最も合っていると考えました」というように、相手が“自分で選ぶ”余地を残してあげることも大切です。
人は「押し付けられた」と感じると無意識に抵抗を示すことがありますが、自ら判断して納得したときこそ、前向きな決断が生まれやすくなります。

まとめ:「納得」を意識したプレゼンが、
関係性を築く
プレゼンは、単なる“売り込み”の場ではありません。
相手の理解と共感を得ながら、同じ方向を向くための大切なコミュニケーションの場です。
「説得ではなく、納得を引き出す」プレゼンを心がけることで、
単発の提案で終わらず、その後の信頼関係づくりにもつながっていくのではないかと感じています。